『野火』は食人という戦争の極限状況をリアルに描く。地味だが上映され続けるだけのインパクト。

原作である大岡昇平の小説『野火』は、以前から日本の戦争文学の代表作として知ってはいたものの、忙しさにかまけて読めていませんでした。

ただ、2015年のこの映画が「戦争の季節」に近くで上映される機会があったので、観てきました。

冒頭で、本作の主演兼監督の塚本晋也さんの2022年のインタビュー映像が出てきました。

「『野火』が7年経ってもいろんな映画館さんで繰り返し上映されるのは、今の私たちに語りかける大切な何かがあるからだろうと思います」

といった主旨をおっしゃっていました。

戦争の極限状況を描いているので、救いも何もない内容でした(ただし、どこかユーモラスな場面はいくつかありました)。

低予算の割には、爆撃でちぎれた手足や飛び出す内臓が妙にリアルなので、「はぁ・・・」と溜め息をつく回数が多かったですね。

あと、例の食人シーンも映画で見せられるギリギリのラインで描いていたように思います。

ただただ悲惨だけど、それが当時の戦争のリアル。

フィリピンのレイテ島の美しい自然と、人間世界の残酷な世界とが対比的に描かれていました。

インタビュー記事によると、塚本監督は高校生の頃に『野火』を読んで衝撃を受け、いつか作品にしたいと願っていたそうです。

けれども、地味な戦争映画になかなかスポンサーがつかず、結局はすべて自分でやるしかなかったいう。

そんな苦労を乗り越えて作られた映画は今もリバイバル上映されているわけで、それは私も有り難いことだなと思います。

小説もそのうち読んでみよう。

公式サイト