必見:『ロストケア』は介護地獄の悲劇と答えのない「正義」を突きつける。誰しも避けられない問題を考えるために。

誰もが介護すること、されることを避けられない現代において、これは絶対に観るべき映画です。

このブログを書く数時間前にこの映画を観たのですが、割り切れない気持ち、安易に結論付けてはいけない考えが、腹の中に巡っています。

予告編を見ればわかる通り、本作は介護現場における殺人を取り扱っています。

そこで長澤まさみ演じる大友検事がその罪を「法の正義」のもとに追及・糾弾していくわけですが、松山ケンイチ演じる介護職員・斯波(しば)の「正義」の言葉は共感せざるを得ない、少なくとも完全否定はできないリアリティがあります。

斯波のまだ若い割にグレーがかった髪や瞳の奥の乾いた光や静かな佇まいは、「大量殺人者」だからといって単なるサイコパスではない。

心優しい人間が無情さに殺されてしまった後、それでも魂はこの世に留まって「穏やかなる死神」として生まれ変わってきたとしか言えないような「神がかった」演技ができる松山ケンイチさんは、どれだけすごい役者なんだと思わされます。

それと勝るとも劣らず、柄本明さんもまたすごいよなぁ・・・ラストは涙なしには観られんかった。

森山直太朗さんの主題歌も涙をそっと拭いてくれるような曲だし・・・

「いい映画」というと語弊があるんですが、とかく普段観ないようにしている社会問題を考えさせられます。

以前ご紹介した『PLAN75』と一緒に観ると、深い溜め息しか出てこないでしょうが、いつか必ず向き合うべき問題なので、早いに越したことはないでしょう。

それにしても、介護現場の悲劇は国がちゃんと予算をつければ、大半は解消できるはず。

政治の話をするブログではないのでここではやめておきますが、うがった見方をすれば真の「犯人」は顔のない国なのでしょう。

斯波のような人間がこれ以上出ないことを祈ります。

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