この作品は、小説を見てから映画を見ました。
出版からずいぶん時間が経っているのでネタバレしてもいいとは思いますが、あえて言わないことにします。
前半はかなり退屈な話が続くのですが、最後まで読んでから振り返ると、ここに「物語の核心」が込められていることがわかります。
それがわかってくると、生命のどうしようもない悲しさと、そして美しさがジワジワ胸の中に広がっていきます。
生命が何よりも大事だという現代の「生命至上主義」が生んだグロテスクな作品ですが、それが逆に人間にとって最も大切な何かを示してくれています。
小説が良かったので、映画も見てみました。
小説をギューッと圧縮したような内容でしたが、限られた時間でしっかりポイントを押さえていました。
小説で感じた悲しさは映画でも伝わりました・・・なかなか良かった。
「ヘールシャム」や「コテージ」を映像で表現してくれているので、小説をさらに理解できました。
私は小説から先に入ったため、映画の何気ないシーンやセリフに対しても「切なさ」を感じてしまいました。
冒頭の歌のシーンで、胸が締めつけられるようでした(制作側も大切な部分だとわかっていて、エンドロールでも流れる)。
小説を最後まで読んだときに抱いた「すべての人間は、遅かれ早かれ『終わり』を迎える・・・」という感想は、映画の最後に同じようなセリフで語られていました。
なお、『約束のネバーランド』は『わたしを離さないで』を参考にしたのかもしれませんね。
これは映画館で見ました。
これも人間の強欲を描いたものですが、『わたしを離さないで』の方が、ずっと上品で洗練されています。
『約束のネバーランド』で出てくる「鬼」は、まさに人間の強欲の化身ですね。
ともかく、人間は「かなしみ」を背負って生きているのだということを、現代的に表現している良い作品でした。
著者のカズオ・イシグロの他の作品も読みたいですね。