『ホールドオーバーズ』:弱さをさらけ出せる関係が、深い交流を生み出す。

1970年のアメリカの寄宿学校が舞台。主に堅物の歴史教師、複雑な家庭事情を抱える学生、息子を戦争で失った学食担当の女性の3人による、心あたたまる映画。

登場人物はみんな心のどこかに痛みを抱えている。

誰もがクリスマスは家族とともに過ごす中、家族がいなかったり事情があって孤独に過ごすのは、あちらの国では相当な孤立感を生むらしい。

『ホールドオーバーズ』というタイトルは「残留者」という意味で、日本独自のサブタイトル「置いてけぼりのホリディ」というのはそれをわかりやすく表現している。

仕方なく一緒に過ごさざるを得なくなったメンバーが、少しずつお互いの背景や痛みを知り、だんだん「疑似家族」のように心が近づいていく。

個人的には、堅物でルール厳守のため生徒に嫌われているハナム先生がだんだんゆるくなっていくプロセス、そして最後に「ルビコン川を渡る」シーンがグッときた。

彼が堅物だったのは自分の弱さや劣等感を隠すため、あるいは「模範となる大人でなければならない」というプレッシャーがあった。

そんな彼が柔軟になったのは、人の痛みに触れ、そしてあるハプニングから誰にも言えない過去を語り出すところから。

見終わった後は、ちょっとやさしい気持ちになっています。