『梟』は17世紀の李氏朝鮮時代、皇太子怪死の真相をめぐるサスペンスホラー。今に続くドロドロ権力闘争の歴史・・・

備忘録的にレビューします。

・ちょうど「李氏朝鮮時代からの半島の歴史」を調べており、この映画が描く時代背景を学んだばかりだったので観る気になりました。ただし第16代王「仁祖」の息子(皇太子)の怪死の真相は不明なので、本作はあくまでフィクションです。

・主人公は盲目の鍼灸師だが「夜目は少しだけ利く」という設定が絶妙(実在の人物ではない)。宮廷に仕える人間は権力者に対し「見ざる・言わざる・聞かざる」を守ること、現代風に言えば「忖度する」ことが自分を守る処世術。これは今も昔も変わらない。

・ただ、「本当に見ない振りをしてもいいのか?」「天道や人道に反する行いは、たとえ自分の立場を不利にしてでも見つめるべきではないのか?」 これが盲目の鍼灸師の目を通して描かれる。個人的には好きなテーマでした。

・真相を暴いていく流れがハラハラとさせられる。鍼灸師ならではの打開策があり「なるほど、その手があったか!」と思わされるのはサスペンスとして面白かった。

・歴史書で学んだ通り、朝鮮半島は地政学的に政治的衝突が絶えない気の毒な場所であることが映像でもよくわかりました。そして当の朝鮮国内においても血で血を洗う権力闘争が絶えない。現在の韓国で新大統領が前大統領を粛清するのは外国から見れば奇異に感じるでしょうが、これは昔からずっと続いていることなのですね。我が日本の何と穏やかなことか。

・主人公が夜に行動する性質ゆえ全体的に映像は暗く気楽に観れる映画ではありませんが、朝鮮半島の特異な事情や純粋なサスペンスホラーは純粋に楽しめる一作だと思います。

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