本作はまだ駆け出しの頃のバットマンが「自分にとっての正義とは?」を、ダークな雰囲気の中で自問し、最後はある回答を見出していく作品。
約3時間の長尺、ほとんどのシーンが雨で薄暗い。それは舞台であるゴッサムシティの腐敗と治安の悪さを物語っています。ポップコーン片手に気楽に観れる映画ではありません。
ただ、個人的にはこの長さがダルいとは感じませんでした。今回のヴィラン(悪役)であるリドラーが次々に仕掛ける謎解きが良いリズムを生んでいたように思います。
なお、本映画の宣伝文に「『ジョーカー』の衝撃は序章に過ぎなかった」なんて書いていますが、今回のバットマンとあのジョーカーとは描いているものが違うので、この表現は適切ではないですね。
『ジョーカー』は自分の才能のなさや不幸な境遇を、暴力で発散させようとする単純な思考回路しか描かれていません(どこにもはけ口がない苦しい思いは理解できるけども)。なので個人的にそれほど良い作品とは思っていません。
今回のバットマンは事件を追っていくうちに、リドラーの犯罪動機である「復讐」を「もう一人の自分の姿」として客観視できていくにつれ、バットマンの中で変化が起こっていく。自分が自分らしく生きるために必要な「鏡」を、本作はうまく描いていたように思います。
その結末がラストシーンの”アレ”なわけです。
ジョーカーが不幸なのは、その「鏡」と巡り会えなかったことでしょう。
スパイダーマンやアベンジャーズのように「特殊能力」がないバットマンだからこそ、非常にリアルで人間的です。そこが個人的に好き。
今回のバットマンがもっと成長したらどうなっていくか見てみたいですね。