いい映画だったかと言われると、うーん・・・というのが正直な感想でした。
全体的に暗かったですね。
文字通りトーンはずっと暗いし、人物の表情もあまり見せない(後ろ姿、横顔、引きの映像がほとんど)。
なので必然的に能登の自然、特に冬の厳しさ、そして地元でたくましく生きる人々の「風景」を味わうような感じになりました。
遺品である自転車のカギの「鈴の音」が亡き夫と遺された自分とをつなぎ留めているような感じがして、さらにあの波の音が郷愁を誘うような印象を持ちました。
まぁ暗いんだけど、最後は幻ではない「光」を感じさせるような描き方でしたね。
原作が昔 何冊か読んだ宮本輝とのことですし、映画では描いていない内容もあるようなので、機会があれば読んでみようかなと思います。
驚いたのが、最初の舞台が私の出身である「尼崎」だったこと。
「杭瀬(くいせ)」「大物(だいもつ)」という尼崎の駅名が出てきたので「!?」とやけに反応してしまいました。
前情報なくポスター写真を見て直感で「観たい!」と思ったのは、生まれ故郷に「呼ばれた」のでしょうかね。
本来、生命とは「ほの暗くて混沌とした何ものか」であり、能登の荒れた海に、それを感じます。
その混沌の向こう側に、「幻の光」が見えることがある。
それが「魂の故郷」のような気がするのではないか。
たとえ自殺願望がなくとも、ふとした瞬間、それに魅入られることがあるのではないか・・・
一般的な評価は「暗い」のひとことでしょうが、深く味わってみると、いろいろ考えさせられますね。
以上、ざっくり感想です。