アートとしては素晴らしい作品だろうけど、個人的にはモヤモヤしましたね。
特に最初の約30分は、ほんと久々に「映画館を途中退室したくて仕方がない」衝動に駆られました(両隣に人が座っていたので無理でしたが)。
本作は主に3つのパートに分かれているのですが、第1パートは不穏で不快な気分になる可能性が高いので、それを踏まえた上で観ましょう。
また予告編の印象で先入観を持っていると、良くも悪くも裏切られます。
かいぶつだーれだ?
「怪物」といっても別にモンスターやゾンビは全く出ない。
「何が怪物なのか」は最後まで観れば、それぞれの観客の中に答えが出てくるでしょう。
素人でも音や光の使い方が巧みだなとわかります。
音楽担当は先日亡くなった坂本龍一。透明なトーンの曲調は本作にぴったりだったかと。
本作はいわゆる「羅生門形式」と言われるやつで、同じ場面を異なる人物の視点から描かれているもの。
何が怪物なのか、そして何が真実なのかは、見る人によって全然違うよという話。
ただ現実にはあり得ないだろうコメディタッチの描き方が特に第1パートに多いので、そこがイライラしてしまいました。
「あの是枝裕和監督だから期待したけど今回はダメだったか・・・」と後半になるまで感じてしまいましたよ。
ただ、もしかしたらこのイライラも意図されて制作されているかもしれません。
まさにこのイライラこそ、「怪物」を生み出すエネルギーになっているのではないかと。
なので「芸術作品」としては秀逸なんですよ。
ただ、別に「伏線は全部回収せよ」とは言わないけど、冒頭シーンのアレの原因については言及してほしかったなぁ。
「解釈は観客に委ねます」ってことなんだろうけど、もうちょっと示唆が欲しかった。
是枝監督の『ベイビーブローカー』ぐらいの委ね方ならまだ良かったんですが・・・
繰り返すけど、映画作品としては秀逸なのだと思います。
カンヌ国際映画祭・脚本賞も受賞しているしね。
けど、大衆向けエンタメとしてはうーん・・・というところ。
まだレビューは観てないけど、おそらく多様な考察があり、好き嫌いが分かれているはず。
今後も是枝作品は観るだろうけど、この『怪物』は肌が合わなかったかな。
本当は1回目で全体像を理解してから、2回目を観ると味わいが深くなるでしょうね。