『太陽とボレロ』は芸術とカネは切り離せないシビアな現実を描く。映画館の音響で楽しもう。

「地方の社会人交響楽団の衰亡と再起」というテーマに興味を持って鑑賞。

ストーリーは凡庸で現実感が薄めで眠くなる場面もあったけど、主演の檀れいさんがすごく上品だったし、タイトルの『ボレロ』をはじめとする音楽もまあまあ良かったので、それなりに楽しめたかな。

それぞれの楽団員さんは音楽が大好きで、まさに【NO MUSIC , NO LIFE】なのでしょう。

けれども、予算がなければホールを借りたりコンサートを告知したりすることもできない。

「芸術はカネじゃない!」「オレはカネのためにやってるんじゃない!」という信念の人もいるだろうけど、現実問題、カネがなければ活動を続けることはできません。

楽団の解散に対して「裏切られた!」って憤る人もいたけど、ある意味ではカネがすべて。

アンタだって、その楽器を購入したり練習したりするのにカネがかかったでしょ。

楽団を継続する予算を確保すべく「枕営業」までやりかけてしまう経営者・花村さん(檀れい)の影の苦労を、全楽団員さんがシビアに理解する必要がありますね。

これは経営者とスタッフの立場の違いからくるすれ違いで、この種のことはすべての業界に共通してあること。

個人的には、どんな活動をするにしても、おカネの問題から逃げちゃいけないなと思いました。

本作の良い点はそれぞれの俳優・女優さんが楽器の演奏をガチでやっているところ。

もちろん難しい演奏部分はプロの手を借りているんでしょうけど、なるべくリアルに見せようとする努力は良かった。

映画館で観たので、音が臨場感を持って伝わってきたのも良かったですね。

ただ、それぞれのキャラクターがマンガ的に描かれているので、わかりやすくはあるんですけど、深くまで入ってこない感じがしました。

特に河相我聞さんの使い方(うざいキャラの人物)がイマイチだったです。

あと、中途半端に恋愛や異母兄弟関係など入れ込んでいたので、「それいる?」と疑問でした。

私はクラシックは門外漢なのでわかりませんが、リアル指揮者の西本智実さんがご登場されていました。

ファンの方からすれば、西本さんを拝めただけでもお釣りが来るらしいです。

確かに、映像からもただならぬオーラを感じたので「この人、誰?」って思いながら観ていたんですが、有名な指揮者だったんですね。

クラシック好きであればより楽しんで観れる作品だと思います。

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