『死刑にいたる病』は、人間に秘める残虐性や暴力性は自分の内にもあることを突きつけてくる。

いやー、怖いけど良い映画でした・・・阿部サダヲさん、すごいわ。

前作『孤狼の血 LEVEL2』もかなり良かったし、白石和彌監督の才能をビシビシ感じました。

冒頭10分ぐらいでキツいシーンが出てきて、一気に「うわー!これ絶対ヤバい映画やんけ!」と掴まれてしまう。

白石監督へのあるインタビューで、

「自分の映画では『見ちゃいけないものをいかに見せるか』が重要だと思っている」

「みんなが当たり前だと思っているところからはみ出した人、はみ出さざるを得なかった人をいかに描くか」

「倫理を飛び越えたところ体験しないと、その境目もわからない」

とおっしゃっている箇所がありました。

コンプラがうるさいテレビでは絶対NGな内容を、この映画では見せてくれます。

別に何か教訓めいたものはないけれど、人間が内に秘める暴力性や残虐性を、作品を通して自分の中にも感じ取ること。

普段は「いい子」「優等生」「良識ある大人」として暮らしているけれど、一皮むけば自分もまたサイコパス的な側面があるんじゃないか。

この作品を見ていて「こいつ、さすがにこれは残虐すぎるだろ・・・オレはここまでクレイジーじゃない」と、簡単に切り離すことができない何かがあります。

まさに「死刑にいたる病」は、感染し伝染する怖さを持っている。

それは阿部サダヲさん演じる榛村(はいむら)のセリフにある

「一回こっちの世界に来たら、もう戻れないんだよ」

という部分に感じました。

途中、ミスリードもあるし回収されない伏線もあります。

主役級以外の人たちの人物背景を、もう少し深掘りしてほしかったところもある。

「映画史に残る驚愕のラスト」という触れ込みは、個人的には納得いかない(白石監督は白黒ハッキリつけずに終わらせるのが好みのようです)。

ただ、阿部サダヲさんの圧倒的な怪演がすべてを持っていった感じですね。

今のところ表向きのナンバーワン作品が『Coda あいのうた』だとすれば、裏のナンバーワンはこの作品ですね。

グロ描写がかなりキツいのにPG-12【子供は保護者と一緒に観てねレベル】 なのが謎(笑)

観るなら心してくださいね。

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