これは地味で静かだけど、とても味わいのある良い映画でした。
現代の台湾は大都市ですが、まだ昭和ノスタルジーのような世界が残っているようですね。
仕事というのは、単に稼ぐだけではない。
仕事を通じて巡り合った顧客の人生、さらに顧客の家族にも心を込めて関わっていく。
もちろん、確かな技術と、信頼される人間性を持って。
あとすごく大事なのが、主人公のおばさん理容師は、ちゃんと常連客にマメに営業していること!
「スマホがなくても、顧客台帳と固定電話さえあれば仕事はできるわよ」と。
かつての日本でも、仕事が人生だった時代があった。
もちろん専業主婦も含め、自分に与えられた役割を全うすることで、自分の人生に誇りを持っていく。
年輩の人から話を聞くと、昔の日本人はたとえ小さな個人商店だろうが、みんな誇りを持ってやっていたと。
道に反する稼ぎ方は、決してしなかったと。
主人公の子どもたちが「稼ぐ」「コスパ」「トレンド」を追いかけているのとは対照的でしたね。
個人的にはこういう「職人気質」が大好き。
たとえ採算に合わなくとも、お世話になった人のところには最優先で駆けつける。
義理・人情・浪花節
今の日本では水面下でまだ生きているだろうが、もう表ではなくなりつつある。
少なくとも、自分の仕事の世界においては、こういう働き方をしていきたいと思いました。
ところどころ笑えるシーンもあるし、素晴らしい映画でした。
本作は「後半生をどう生きるか」が問われている中高年向けですが、若い人が観ても「家族」について考えさせられるでしょうね。